日本語の

          不思議な言い回しのホント意味

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111)(洞)
 今じゃ、「ほらあ(洞穴)」と表現されるのが一般的ですが、もともとは「ほ(洞)」と呼
んでいました。
参考に広辞苑での解説を記します。
広辞苑:@崖や大きな岩、大木などの中がうつろな穴。ほらあな。<和名抄一>
       A谷。<新選字鏡六>
要するに構造物中の空隙、一定の空間を意味するようです。
なぜここで取り上げたのかと言うと、「ほ」と言う言葉の要素は火ないし炎を意味することは
説明することもないと思いますが、もう一つには、ここで取り上げた「ほら(洞)」のように
造物中の空隙、空間もしくは何もないところを意味し、これがさらに擬性的にほかの言葉の要素
としてある特性が不足していること、無いことなどを示すようになっているなど広範に使われている言葉の要素と考えられるためです。それから、音韻変化として「そ」→「ほ」がありますが
ここでは割愛します。「それそれ」→「ほれほれ」なぞであります。
なお、「ほら」の「ら」は「のら(野良)」や「はら(原)」、「ここいら」の「ら」が示す様に
前の語彙要素を受け「・・の場所、部位」を意味します。
問題は「ほ」ですが、「ほ」はどんなふうに使われているのか。面白い例をいくつか紹介しましょう。
@    構造形体や地勢の空なる様や割れ目などを表現する例。
ほらほら:中ががらんどうな様。古事記に出てくる「うちはほらほら、そとはすぶすぶ」
ほらがい(法螺貝):いわゆる「貝」は二枚貝で料理すれば平たくなりますが、サザエのようなものは空ろな殻(ほら)におさまっています。「ほら」の構造の貝。
ほと:漢字表記は未確認です。女性の性器を意味する日本語です。古事記参照方。
ぼんぼり:燈火(ほ)を囲う球形の囲い(ほり)。「ほ(火)を囲う、いれもの」
ほり:作られた溝。掘ったもの。水をたたえ、外敵の侵入を妨げる。水堀。
 
A拘束、間隔など無の状態、ないしは無にする行為
ほぐす:元の形をなくす行為。
ほじくる<ほじく>(穿る):構造体の一部を除去すること。
ほどく:拘束しているもの、たとえば帯、包帯を除去すること。「ど」は場所。
ほどなく:「まつほどなく」が示すように、時間的な空白がない様。「ど」は「と」の濁音化。
ほる(掘る、彫る):ある目的のために、あるものを除去すること。
芋を掘る:その行為を考えると、「芋を掘る」という表現はかなり簡略化された表現
で、「芋の周辺の土を掘り、芋を取り出す」てのが厳密な意味での作業内容で、
「掘る」の対象物は「いも」ではなく「土」だと言う事。
 ほうる<ほふる>(放る):自分の手元、管理下から除くこと。
ほろぶ<ほろむ>(亡ぶ、滅ぶ):消失すること。なくなること。
ほっとく、ほっとけ:自分の手元、管理下から除くこと。
ぼける:思慮、思いやり(け)が無くなること。
ほうける:「ボケる」
ほご(反故)にする:無かったこと、物とする。
 
その他、濁音化した用例では
ぼる:取り上げてしまうこと。
注記:「暴利」と言う言葉がありますが、これを動詞化したものと言う説がありますが、
   いかがでしょうか。同じく、
「サボる」と言う言葉があります。これは外国語の「サボタージュ」を簡略化し
「サボる」と使うようになったとありますが、「さ」はたびたび紹介しているよう
に、物事を体系的な知識、識見だ判断することを意味します。「さようかー」の「さ」
が身近です。そのようなことをしなくなることが「サボる」なんではないでしょう
か。
「ぼったくる」とか「おいてけぼり」の「ぼ」を同系の展開語かと思われます。
 くぼみ(窪み):構造体(く)のうちで欠落ないし低位の場所。地名では「おぎくぼ(荻窪)」
など多数認められる。東京の荻窪は多摩台地の中を流れる善福寺川の谷状
部にある地名。
「しぼる」と「しぼむ」:みずけ「し」をなくすこと。「しぼむ」は水気が消失すること。
            「し」には「体系的な知見、理解」や「ある目標を持った知的な
行動を意味する要素でもありますが、その派生語で「しぼる」など
相手を「ほす」言葉を生んでいます。
 
以上説明しましたように
結論は、語彙要素「ほ」には、
@    構造形体や地勢の空なる様や割れ目などを意味する
A    拘束や、接続、時間間隔などの無の状態、ないしは無にする行為を意味する。
と言う事です。
その由来は未解明ですが、次の例が挙げられています。
@    「ほ(火)」に物を入れた場合、すなわち「ほる」状態で、焼失することの擬性表現
A    人間の「ほほ(頬)」の中の空洞状況を擬態表現したもの。
ではないかと考えられます。
 
以上 
ご参考に:
英語では:hole、
     vacant、valley,vacume
など、音的に似ていてかつ同義のものが多数認められます。
 
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