日本語の

                不思議な言い回しのホント意味

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35)はとば(波止場)とみなと(港)
 
今じゃーあまり使われなくなったようだけど、船着場の事を「はとば」という。漢字では「波止場」と
書く。何も不思議に思ってなかった。
その道の辞書を開いてみると、「港の波止(はと)のある場所」とある。船着き場とは書いてない。「波止
場」を字面通りに解釈すると「防波堤」と云う事になる。そういやー変だぞ。「波」を「は」と呼ぶけど、
こりゃどう見ても「重箱読み」だ。という事は「波止場」は漢字導入以降に作られた漢語借用語彙と云う
事になる。「みなと(港)」とは機能上同じものなのになぜ二通りの表現(言葉)があるんだろ。
と考えているうちに、いろいろ分かってきたのでその紹介。
そもそも、初期の船は「まるきぶね」にあるように、せいぜい数人の人が乗るだけの、小さいものであ
った。船底もごく浅いもので、浅い川でも漕いだり、引いたりして往復できる。
船を止めるには、浅瀬の砂浜なんぞに「船の舳先(へさき)」を押し付け、そこから、村人集まって、波
が押し寄せないところまで運ぶ。場合によっては、丸木のコロを使い運ぶ。こんな風景は50年くらい前
まではどこの漁村でもよく見かけたもんだ。
船の舳先を浜にあてることは「はつ」ないし「へつ」という。「は」や「へ」は「はし」の「は」、「へり」の「へ」。「つ」は「つける<つく>(着く、付く)」の「つ」は地表を意味する。
あわせて、船底の先を海底の地面に接触させることを「はつ」、「へつ」と云う事になる。
いまでも「つ(津)」と云う名前で、船着場を示す地名が多く残っている
後世、船の構造が大型化し、水深の深いところでの乗降が必要になり、乗り降りするための桟橋などが
設けられるようになった。従前の「つ(津)」では「少し違うんだよねー」ということで、「はとば」
と云う名前が作られた。「はつ+ま」だ。
という事で終わりにしようとしたが、「はとば」と「みなと」の違いはなんじゃ?
広辞苑によると、現在のイメージの「港」の意味とは少し異なる説明になっている。@河海などの水の
出入り口。みと。A湾や河口を利用し、または防波堤を築き船が安全に・・・。とある。
すなわち、もともとは港は地形を意味していたもので、機能を意味するものではなかった。
そこで「みなと」もしくは「みと」の原義は何だろうという事になる。
「みな」、「み」は「みず」を意味する。
「と」これは「戸」と云う字を充てるのが普通だ。「戸をあける」の項で紹介してあるけど、
「と」は「いきかいをさまたげる」、「とめる」ことを意味する。
したがって、「みなと」は「みずにより、いきかいがさまたげられる」ことを意味する
大きな川でもよし、奥深い入江でもよし、対岸に渡るには大きく迂回するか、船を用立て
するか、何らかの準備を迫られる。水の障害物(いきかいをさまたげるもの)が「みなと」と呼ばれる。
茨城県の「みと(水戸)」も同じいわれかと考えられる。
その「みなと」は外界の荒波を和らげるはたらきもあり、船が大型化し、浜に揚げることが困難になった時代になると、格好のはとば(船着場)とされ、現在での意味の「みなと(港)」になった。
元々は水域により交通を妨げる場所を「みなと(港)」と称していたのです。
ご参考に、千葉県の香取郡多胡町の南西部に「水戸」地名があります。芝山の方から来ると、現在は
水田地帯ですが、近隣に「島」地名があるように、かっては湖沼などの水域に面したところで、ここ
から先は徒歩では渡れないところでした。「行き来を妨げる場所」すなわち「水戸」だったのです。
日本語ってのは理路整然してるでしょ?
おしまい。
 
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