日本語の
不思議な言い回しのホント意味 |
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61)こがらし(木枯らし)
やはり冬ですねー。暖冬だ、暖冬だと言っているうちに、木枯らしが吹き、日中でも
気温は10度を超えなくなりました。
そこで少しシャレケを出し、作句。
俳句
こがらしに やまつばきの あかさまし(木枯らしに 山椿の あかさまし)
すぎばやし こがらしうけて うなりおる(杉林 木枯らし受けて 唸りおる)
和歌
こがらしに えだのたわむる くすのきの なおもしげれる ははみどり
(木枯らしに 枝のたわむる クスノキの なおも茂れる 葉は緑)
皆さん、ご返歌はいかがでしょう。
それはそれとして、本コラムの題名の「こがらし(木枯らし)」の充てた漢字は妥当なの
でしょうかネ。実は、最初に掲げた句がその漢字に対する疑問を表現しているのです。
日本は現在でも世界で有数の照葉樹林地帯です。代表樹は「つばき」、「さざんか」、「しい」、「まてばし
い」、「つげ」、「くすのき」・・。ちょっとそれますが、「すぎ」、「ひのき」「はいまつ」などなど。ぜーん
ぶ常緑樹です。当然ながら、冬になっても枯れ葉はつかない。まして、「きがかれちゃうようなつよいか
ぜ」なんてのは、現場、現実を目に前にした縄文人には「なーに、ばかいってんの」と映る。不適切な
漢字をあてたための、誤解なんです。
じゃあ、「こがらし」の本来の意味、いわれはなんなのでしょうか?
最初に、言葉の基本部である「し」ですが、「し」にはいろいろの意味が含まれています。
ここの場合の「し」は風が吹くときの音「しゅー、しゅー」を模した語彙要素なのです。
参考に、風の音を模した表現としては、
「風がスースー吹く」
「風がヒューヒュー吹く」
「風がビュービュー吹く」
「風がゴウゴウ吹く」
などがあります。風は身近な現象なので英語、漢語などでもこれを模した言葉を持っています。
「し」という風を意味する語彙要素を受けた言葉には
「あらし」、
「やまあらし」、
少し音変化が入っていますが
「こち(東風)」
などが代表的です。
「こがらし」の「し」も風を模した言葉と考えられます。
「こ」は充てた漢字が示すように「木」とみてよいでしょう。「こづち(木槌)」の「こ」です。
ポイントは「がら」の意味です。これは現代日常語でもよくつかわれる言葉で、「構造体、躯体」
を意味します。「からだ(体)」の「から」と同根でしょう。たとえば、「おおがらなひと(大柄な人)」のように使います。
「こ」とあわせて「こがら」は「木の躯体」ということで、「木そのもの」のことということになります。
「こがらし」は木が風を受け、周辺で風のが「しゅーしゅー」唸ることを表現した言葉ということになります。
参考に、
「あらし」:高いところ(あら)でなる風。
「やまあらし」:高い樹木の生えている場所(やま)で唸る風。
「こち」:「こ」は愛称にもちいられる「こ」で、ま、「おだやかな、やわらかなる風」
ということです。
参考に、「すきま(隙間)」は「すくま」。風が「すー」と音を立てる(く)場所(ま)。
そうすると「かぜ(風)」はなんだ?またの機会に。
以上
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