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66)地名、「うら(浦)」の由来
地名で「うら(浦)」の付くものは非常にたくさんある。
わが田舎屋の近くには有名な「霞ヶ浦」や、その東隣の「北浦」、さらにその南側の「外浪逆浦」
なんというのが在る。「うら(浦)」は波穏やかな内海のことだと教わってきた。
だが、地名を観察しているうちに「うーん?」と考え込んでしまった。関東地方に限らないが、
「うら(浦)」の付く地名が数限りないといってよいほどたくさんある。
少しだけ例をあげよう。
  うら(浦和、埼玉県、北海道福島町)
  つ(土浦、茨城県)
  びょうぶがう(屏風ヶ浦、千葉県、神奈川県、長崎県五島列島女島)
  しばう(芝浦、東京)
  う(浦賀、神奈川県)
  う(浦河、北海道)
  うらや(浦安、千葉県)
    みう(三浦、神奈川県)
  うしばう(海芝浦、横浜市)
  た(田浦、横須賀市) 
  (六浦、横浜市)
  そで(袖は浦、千葉県、神奈川県大磯)
  え(江の浦、神奈川県根府川近)
 に(西浦、静岡県大瀬崎)
 たご(田子の浦、静岡県富士市)
 すま(須磨の浦、兵庫県)
 うら(浦田、熊本県宇土市ほか多数)
 うら(浦戸、)
 う(浦上)
 う(浦里)
 む(牟田浦)
 かみのう(神の浦)
 うらさ(浦佐)
 うらせ(浦瀬)
まだまだありますけど、あまりたくさんなので割愛。(九州だけで、ざっと1451か所あります)
調べているうちに、「・・うら(浦)」というのは海域とか水域を呼ぶのは例外的で、ほとんどが海岸
沿い、河岸沿い、山間部などの高台の地名であることが分かってきた。
そこで本来の「・・うら(浦)」という名称はどんなところにつけられているのか考えました。
ここで、本ホームペイジ上ではたびたびご紹介している、近頃は常用手段になっている
言葉の分析法「語彙要素抽出合成法」を援用して、解釈を試みると、
」は「うえ<うへ>(上)」の「う」。上位、高位にあることを意味する。
「・・ら」は「・・のもの、場所」を意味する。「はら(原):平たい場所」が代表例
あわせて、
ら(浦)」は「高み、小高い場所」を意味することになる。
 
現実の「う(浦)」地名の地勢はどうなってるんだろうか
幸い、国土地理院が地勢図(2万5000分の一)をWEB上で開示している。これを観ると、
「う(浦)」地名の地勢は、概ね、「海岸ないし河川の岸辺で、水面より小高くなったところ」であ
る。九州や四国では、さらに山奥にもこの地名を見かける。
ちょっと脱線するが、
田子の浦」は「田子の浦港」の地名でこんがらかってくるが、田子の浦港がなかった、明治初頭の
地図では現田子の浦港の西に「田子の浦村」が認められ、ここが「田子の浦」の原点であることが容
易にわかる。駿河湾からは、海岸段丘(太平洋プレートの進行のより形成されたもの)で隔てられ、
内陸側に所在する。
かって、西暦1000年ごろ以降の東海道はこの海岸段丘上を越えていた。富士川の流れは、今の
ように駿河湾にまっすぐ流れてはおらず、大扇状地をへて、主として、現田子の浦港の港口を川口
とした、氾濫河川であった。京都から関東地方へ下る場合、この地域を踏破するのは、いくつもの
富士川支流を越えなくてはならず、大変な苦行であった。それを越えて、田子の浦の海岸段丘上の
ルートへ出た時、さぞほっとしたとおもう。
 その時のほっとした心境で読んだのが、かの有名な歌
田子の浦ゆ 打ち出でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りつつ」なのです。
御参考に、明治20年測図版にいろいろ注記を加えた地図,富士川河流と田子の浦(:初公開)を
リンクしておきます。少々粗雑な面もありますが御鑑賞ください。
 
話を元に戻して、語彙要素抽出合成法によると、
地名「う(浦)」は、海岸、河川、湖沼の水面より高台の地を呼ぶ一般名称であることが分かる。
 
漢字「浦」は漢語読みでは「ほっ」である。なぜ「うら」に当てたのだろうか。
漢字は元来当て字であり、往々にして日本語の原義を踏まえないでの不適切当て字が見うけられる。
と思って、「うら(浦)の意味を再確認するため辞書にある解釈はどうなっているのかを調べた。
漢字辞典「角川 新字源」を紐解くと、な、なんと、以下の解説があった。
「新字源解説:浦」
@海や湖、川などにそった一帯の地
Aきしべ
B大きな川の小さな支流
一方、「岩波書店 広辞苑」では、
@海や湖の湾曲して陸地に入り込んだところ。
A一般に海辺。また水際。
現実の日本の地名は前出の通りです。広辞苑の解説は現実の地名の状況を確認していないと
推察されます。ちなみに、霞ヶ浦なる地名は近世につけられた名前で、古代での呼びは
「志多の海」でした。
以上
 

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