日本語の 不思議な言い回しのホントの意味
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7)やましごと(山仕事)
現在、一般的に使われている「やま(山)」というのは、ある高さの、頂点を持つ隆起した地形のこと
だよね。「山」は漢語読みでは「さん」なので、「ふじさん(富士山)」とか「あそさん(阿蘇山)」とい
うように使われている。
「やましごと」の「山」の意味が、現在の「やま(やま)」の意味で使われているとすると、またまた
変なことに気がつく。富士山や阿蘇山でやる山仕事ってのは何をすることなのだろう。石の掘り出しか?
近頃はあまり見かけなくなったが、山仕事に出てゆく人は、野良着を着て、手甲、脚絆をつけ、足には
地下足袋。それで、背中には大きな竹籠を背負い、腰には山刀(なた)、山鎌を手に持つ。このスタイル
ってのは、何のためだ?
じつは、「やましごと」の「やま」に不適切な漢字「山」を当てたために元の意味が分かんなくなっちゃ
ってるんだ。漢字「山(さん)」に相当する、日本の地形語は今更説明することもないと思うけど、「たけ
(岳、嶽)」、「たか(高)」なんだ。富士山は「ふたけ(富嶽)」、北アルプスの「しろうまだけ(白馬岳)」。
有名な北アルプスの「穂高」、木曽の「御嶽」などなどいくらでもあるよね。
かんたに言うと「たかい(高)」ことを意味する。その他、高いところを意味する地勢語には「たま」
「たち」などある。「多摩」、「たちばな(橘花)」、「たこ「田子」などなど。これらは地勢語の項で解説し
よう。
さてと、元の意味を考えるときのヒントの一つは、上に書いた、「山仕事」にゆく人の身づくろいにある。
仕事は「かやくさ」を刈ったり、焚き木を拾い集めたり、時には枝降ろしをする。時には大勢で来て、家
を造るための木の切り出しをやる。狩猟をすることもある。まとめて、「やましごと」という。
結論から言うと、「やま」というのは「木がうっそうと茂り、太陽の光がよく通らない場所」を意味する。
「ま」というのは「間」、「場所」を意味することは他の項でも説明したので、ここでは省略。
問題は「や」だ。「や」というのは「(上部を)おおう、さえぎる」という意味がある。
転じて、「保護、庇護、養護する」という意味もある。他にも広く展開されている言葉の要素なんだよ。
じゃ、どんな言葉からそういえるのか。
一番簡単なのは、「やね(屋根)」、「やど(宿)」、「やく(焼く)」、「やみ(闇)」。
類似的なのは、「・・してやる」、「をやじ(親父)」、「たがやす(耕す)」、「やしなふ(養う)」、
「はやし(林)」・・・
「やね」、どこかのテレビ番組で「やーね」というのを多用している人がいるけど、こりゃ意味深長。
「やね(屋根)」ていうのは「上をおおうもの」のことだ。現在ではあまりピンとは来ないけど、
昔は、いわゆる掘立小屋だった。地表を覆うものが「やね」だったの。直訳すると、「地を覆うもの」
なんだ。
「やど」、今じゃ旅館のことかと思われるが、昔は違った。この歌ですぐわかる。
「わがやどは、みやこの辰巳、しかぞすむ・・・」。今じゃ旅館のことだが、かっては
「屋根のあるところ」、すなわち、今でいう「家」のことだった。
「やく」というのは、「表面を加工すること」。だから、「焼く」という場合は「火で焼く」と、方法を断ることに
なるんじゃ。 「表面を擦って加工する道具」は「やすり」というのとおなじ伝だ。
「やみ」というのは、も、説明不要か? 「み(視野、視認)」を「妨げる」ことになる。
要するに、「見通しが立たないこと」になる。
参考:「や」は物体の表面を意味する ということは「やすり」の言葉からもわかる。
「つや」というのも「つるつるの表面」ということを意味する。
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