日本語の

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80)さる(錆びる)
「さびる(錆びる)」て言葉はよくつかわれますよね。古いけど「刀が錆びた」。日常的には「包丁が錆
びた」なんて使われます。主として、金属(鉄が中心です)が、その金属光沢を失って、赤くなったり、
黒くなったり(それぞれ化学的質が異なりますが解説は省略)すると「あかさびだねー」とか「錆びちゃ
って、黒ずんでらー」なんて表現されます。
少し異なった漢字が用いられてますが、「街がすっかりさびれ(寂れ)て」なんて表現もありますねー。
街灯ばかり華々しいのですが、人通りは少なくなって、店の女将さんも、奥に引っ込んじゃう。
 
で、この「さびる」ってのは何のこっちゃ?というのがスタート点なんですが、日本の言葉の基本語
彙要素に関連するのでここで取り上げました。
 
言葉の要素の説明からしますと、「さ」にはいろいろな概念が含まれています。
たびたびお話ししてますが、言葉の原点は「擬音」、「擬声」で、それを生ずる物を表現する「擬態」
でさらに展開され、その類型的な特性を用いて抽象的な言葉へとさらに展開されているのです。
「擬音」、「擬声」による言葉はほぼ人類共通の表現なので、色々な言語間で共通性が出てきます。
「さ」の場合も色々な原点と展開が見られます。
その一つは
「ささ(笹)」に在る様に、手やら、足で触った時の音を表現したもので、薄っぺらで
触れば「かさこそ」音を立てるもの。その音の小さな事から「ささやく」など軽微、微小なものの表現に使われいる。
その二つは
表面に触った時の感触(音感)を表現したもので「さらさら」、「ざらざら」など。
これは展開されて、「さわる(触る)」などの触感語へと展開されていると考えられます。
さらに、物事を体系的に理解することを表現する言葉へと展開されています。たとえば、「さとる(悟
る)」の「さ」に在る様に、「ものごとがどうなっているのか」を理解することを意味します。
その三つは
大勢の人が集まって、勝手におしゃべりをする時、「ざわざわ」と聞こえますが、
その音を、模して(擬声語)、「さわぐ(騒ぐ)」などの言葉の要素となっているんです。
「さわぐ」は集まった人々がまとまっていろいろ意見を発する様を表現した言葉です。「わぐ」はまとまって何かをする事。
その四つは
「さ」は海やら、水の流れ(小川、瀬)が出す音「ざー」や「さ」や「さらさら」
などの音を模したもので、「海」やら水の流れの「瀬」、「小川」を意味する言葉の要素であります。
「せ」とも呼ばれています。「さ(沢)」や「()」の「さ」もここからきていると考えられます。
 
海岸沿いの地名には「さ」とか「せ」を持つ地名が沢山あります。川の流れは、特に早い流れでは
それらの周辺の地名は「さ」や「せ」を持つものが無数に見かけます。
「さどがし(佐渡島)」は「波の立つ島」を意味します。
さ(土佐)」は「あらい、とがった」+「なみ」に由来すると考えられます。
(薩摩)」は「波洗う場所」。
そのほか無数に地名に使われています。「地名の成り立ち」の項をご一読下さい。
ヨーロッパ語族の海を意味する言葉は「Sea(シー)」とか「See(ゼー)」てありますねー。
 
これらの擬声、擬音語彙の展開語は非常に広範囲に展開されています。
その一つが本稿に関係するのですが、前述、四つ目に紹介した水の流れや波の音を模した「さ」が
水面の穏やかな光沢、明るさ、光芒を意味する言葉へと展開されていると考えられます。
典型的言葉が「さ(朝)」です。「さ」は太陽が地平線から上がる前に、地平線の付近の空がほん
のり明るくなる状況を表現したもので、「あ(遠く)」が「さ(明るい)」と表現したものでしょう。遠い
い空が薄ぼんやりと明るくなる様を模している言葉と考えられます。
日常語の「さえわる」や「ひがさす(陽が射す)」のも同じ「さ」も同じ意味で、明るく冴える
事を意味します。
参考:「花が咲く」の「さく」も同じ由来で、「はな(はしっこ)」が「さく(光芒を持つ)」こと
かと考えられます。山桜が春の日を浴びて光芒を放つ様を思い出して下さい。「さくら」
もその花盛りの様を表現したものでしょう。
 
参考:これはさらに展開されて、物事をよく理解している事、「・・にあかるい」事を意味する
「さえる」や「さとす」などの「さ」に展開されていると考えられます。
 
「さる」の解説には「びる」由来の説明が必要です。
この「びる」は「ひる」の派生語で、あえて漢字で表現すると「陽る」です。太陽の光を受けて「干
る」により、物性、性状が劣化する事を「ひる」と云いますが「びる」はその派生語と考えられます。
「ひるご(一種の未熟児)」や「ふるびる(古びる):外観(ふる)が劣化する」の「びる」同じ伝。
「くたびれる<くたびる>(草臥れる)」は「くた(身体)」が「びる(劣化する)」こと。
「ひだり(左)」は力、影響力の低い事を意味します。「ひだりて(左手)」が最も身近な例です。
「浴びるほど酒を飲む」の項をご一読ください。
なぜかヨーロッパ語族でも、音声類似語に[poor]がありますが、これについては別途解説しま
しょう。
参考:「わびる(詫びる)」の「びる」は別議です。「わぶ」の事です。
 
両方合わせて、
「さる」は「光芒、光沢(さ)」が「劣化する、低下する(びる)」事を意味するのです。
 
以上。(少し解説が長すぎたかねー。)
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