日本語の

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88)いきをぬく(息を抜く)
 もうじき立夏ですねー。太陽はまさにさんさんと照り、草木は新緑を競い、日の光が輝いています。心
もウキウキしますよねー。 なんですが、当然農繁期です。畑を耕し、種をまく。芋の植え付け場所も準
備しなくてはならない。ジャガイモの芽欠きもほっとけない。ソラマメの花は真っ盛り。いい匂いをさせ
ているわきを通ると、「おっ!追肥と土寄せを忘れておった」なんて、次から次へやることが出てきて、息
を抜く間もない。「やれやれ、毎年のこった、頑張るっきゃない」なんてお茶を口に含んだところで、「い
きをぬく(息を抜く)」てのは変じゃないか?と気になる。それがこの項の出発点
どこが変か?
「息を抜く」ということは「ぬく(抜く)」という漢字からすると、ある場所から息を抜き取ることのはず
だ、だとすると意味が分かんなくなっちゃう。そこで考えてるうちに、「はっはー、また不適切当て字な
んだな」と気が付く。
日本語では「・・・ではない」とか「・・しない」さらには「・・がない」など「ない」ことを意味す
る言葉の要素として「ぬ」というのがある。
例を挙げる必要もないと思うが、
そんなこと知らない←そんなこと知らぬ
雨が降らない←雨が降らぬ
息がない←いぬ(たびたびご紹介してますが、「しぬ(死ぬ)」というのは漢語導入新語で「いぬ」の
漢語借用表現)
「ぬく」を用いた言葉はたくさんあります。たとえばの話。
「てをぬく(手を抜く)」:必要な処置(て)を無くす。
「ぬくい<ぬくゐ>(貫井)」:地球(ゐ)を除去(ぬく)したもので、現代でいう堀井戸のことです。
(参考:「井の中の蛙)という表現がありますが、冬眠などで地中に巣食っている蛙のことです。「井戸の
中の」なんて解説がはびこってますが、井戸の中に蛙が入りこんだの見たことないでしょ?」
 
参考:面白いことに、ヨーロッパ語族でも、この否定、不在を示す言葉は「ぬ」と類似音の言葉である。
No、Ne,Nein・・・。類似性がるということは言語の同族性を意味するものではない。同じよう
な表現が現れるのは、人間のとっさ的な発声本能によると考えられる。これついては別の機会に紹介した
い。
 
元に戻って、したがって、「いきをぬく(息を抜く)」は「息をなくすこと」だということになる。
農繁期にかかわらないが、肉体的にきつい仕事を息せき切って働いているとき、息を「はっは」とさせ
ながら、働く。(なぜか、この呼気音を昔の人は「せっせ」と表現していたと考えられる。「せき(咳)
をする」も同じ表現である)。
作業を中断し、この荒々しい呼気音を通常の静かな呼気状態にすることを「いきを(ぬく)なくす」
と表現したものでしょう。
 
ちょっと脱線しました。ここらで一息入れましょうか。
以上
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