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89)「い<ひ>(恋)」と「い(故意)」
いつの間にか、空の明るい時期になりましたねー。遠く、地平線の山並みも春霞の上に輝いています。
そして、恋の季節。中学校の若い女の子はこの時期、まさに「におい<にほひ>乙女」、顔は輝いています。
てなとこなんですが、「こい<こひ>(恋)」てのはなんでそのように呼ばれるようになったんでしょうか。
結論から言うと、ここでの「こ」は、人間の心音を模した言葉で、「こころ(心)」のことを意味します。
人間に限らず、行動、振る舞いを意味する言葉の要素に「ふ」というのがあります。この「ふ」が「こ」
と一体となり「こう<こふ>」という言葉を作っているのです。その名詞形が「こい<こひ>」です。
すなわち、こい<こひ>は心の振る舞いのこと「心のなせる業」というわけです。
こう<こふ>(乞う)」もあてた感じは異なりますが心の動き、振る舞いを意味します。
今でいう「こい(恋)」は「いろこい」の省略語と考えられます。「いろ(色)」は,元々は活力、生命力
を意味する言葉です。(いろ(色)の項を参照ください)
 
ついでの解説ですが、
この「こ」という言葉の要素をもととしてできた言葉にはいろいろあります。その一部をここで。
「こつ(コツ)」:理屈ではなく、心に感じて得たもの。心に通ずるもの。
新明解古語辞典:「芸道の神髄。呼吸。また、それを会得する天分」と。
 「こごと(小言)」:こころ、心情にかかわる事柄。現代流でいうなら、「文句」。小さい言葉ではない。
新明解古語辞典:不平文句。苦情。
 「こだわる<こだはる>(拘る)」:物事を決めるに、自分の心情(こだ)を持ち続ける(はる)こと。
新明解古語辞典:気にしなくてもいいことを気に留める。
「ここだにぞかなし」:こころ(ここだ)をおもっても何にもならない(かなし)。
参:万3373:多摩川に さらす手作り さらさらに 何ぞこの児の ここだにぞかなし
「よろこぶ(喜ぶ)」:「よろ」+「こふ」。よろしい、うれしい気持ちになる。
 
てなことなんですが、ご感想は?
 
 
参考:心音とその派生、展開語
心臓というのは、その人の心の状態に対応してさまざまな音(鼓動音)を出しているでしょう?
常識的なところでは興奮した時に「どきどき」する、びっくりした時に「どきっ」とするなどがありま
す。静穏時には「とき、とき」とも聞こえます。さらに、周囲も静かな夜半に、片耳を枕に添えて静か
にしていると「トット、トット」と感じますが、さらに静かにしていると「コッコロ、コッコロ」とも感
じます。これらはいずれも心臓が血を送り出す時のいわゆる脈動に伴う振動を音として感じているので
す。
「心電図」なるグラフィック表現がありますが、それにもきちんと出ています。
この音の具合が心の状況を表現していることで、擬音的に表現した言葉が非常に多岐にわたって発生し
ています。その一つが「こ」になるわけです。
「こころ(心)」という言葉は、「こっこ」を出すもの「ろ」に由来すると考えられます。「ろ」は「・・
の物」を意味する語彙要素です。
他に心音に由来する擬音語を紹介すると、
心臓:「とどめ」。心音「とっど、とっど」を模した言葉。「とどむ」=「とど」を産む「む」から来た語。
動悸:「どきどき」。漢語でも同じなのが面白いでしょ。
:心臓の音の正確な周期性を模して、「とき」ということになったと考えられます。
参考に、時間のことは「ま」もしくは「ば」と表現します。
「あと」の「と」もタイミングを意味します。
「おととい(一昨日)」、「おととし(一昨年)」の「と」もタイミング(時)を意味します。
「とし(年)」の「と」も元々は「とき(時)」に由来します。
英語ないしドイツ語では「Time」、「Zeit」で「タ」ないし「ト」を語幹としています。
 
ときどき:断続ないし不連続の現象は「ときどき」と表現されますが、これも心音のことを模した
表現でしょう。
 人間:現代語では「ひと」と表現しますが、ようく言葉を観察しますと、もともとの表現は「と」だっ
たとわかります。この「と」も元々は心音に由来する言葉と思われます。
身近な例では
「おっ<をっと>(夫)」:上に位置する人。尊敬語。
「おとう」、「いもう」の「うと」も同じ意味です。
「ぬすっ(盗人)」:物をなくす人。
「かりう(狩人)」:狩りをする人。
それでは「ひ」というのは何を意味するのでしょう。
「ひ」は数詞「ひ」が意味するように、最高位の物を意味します。要するに「と」の尊称です。
 
併記表現:「あれとこれと」のように併記表現するときに「と」を用いますが、これも心音を模した
表現なのです。
 
以上
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