2−2)語彙要素という概念とその抽出,合成法の紹介

                                     Words Elemnts and abstracting process                                 

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鉱物から、植物、動物まで無限に広がる存在物もいろいろ調べてゆくと、万物は91の化学元素
より成り立ていることが分かっています。この複雑そうな人間も、窒素、酸素、水素、炭素とカル
シューム、鉄などから成り立っています。
 日本語の言葉(語彙)もいろいろの例を観察、検討してゆくと、相互に関係ないように見える言葉と言
 葉の間にも、ある部分については同じ(共通)の意味(概念)を持っているのではないかと思われること
 があります。さらに検討を進めてゆくと、「言葉というものは、特定の意味を持つ単音節要素の組み合わ
 せにより成り立っている」といえることがわかってきました。
 この一定の概念をもつ単音節部を言葉の要素(語彙要素: word element)と名付けます
その解明、解析の方法は、現在は試行錯誤の段階ですが、音的に似通う、いろいろの言葉を、多数
ならべ、その共通的概念をもつと思われる部分があれば、その部位を語彙要素としてとりあげます。
そのうえで,万葉集などと対比し、蓋然性を評価します。「ま、よかろう」となったところで、「ひとつの
語彙要素とその概念」とします。
 
この方法を用いますと、現在は使われてない、若しくは現在の意味しない概念が、言葉の要素の
組み合わせで造ることができます。
 総合的に「語彙要素抽出合成法」と名付けてます。たとえば、
「うら(浦)」は現在は「内浦」などに示される一定の海域を意味します。語彙要素の意味からすると、
「う」は「うえ<うへ>(上)」の「う」で、高いところを意味します。「ら」は「はら(原)」など、一定の領域の
土地を意味します。そうすると、「うら」には「小高い所」を意味があるのではないかと考えられます。
その通りで、古語明解辞典にもその意味が記載されています。「むまご」も姻戚語にあるはずと思い
調べましたら、やはり載ってました。 化学合成と同じことができるのです。
 
 ここでは、その論の妥当性を紹介するために、語彙要素の抽出の事例を二、三紹介しましょう。
一部、    歴史的仮名遣いを用いていますが、この方が原義を色濃く残しているからです。くわしくは、
言葉の表記法」の項をご覧ください。
 
例1:「
  たとえば、まったく関係がないように見えますが、
  かし(可笑し)」、「かし(頭)」、「じ(舵)」、つか(国司)」、「なし(悲し)」
  ふ(考える)」、
  
  などなどの言葉があります。
 
  一見しただ けでは、相互の関係は無いように見えます。化学分析のようには簡単ではないが、「何か
 共通した概念があるのではないか」と目を開いたとき、ふと、ひょっとして、と、次のような仮説を抱く
 に至るでしょう。
 すなわち、最後の例「んがふ」が示すように、「」は「どういうことになっているのか、どうしよう
 とするのか」など「疑念を持って思慮する」ことです。
  現代語では疑問文の末尾には「そんなことあるの?」のように用いられています。
 それを用いた「す(「かし」の動詞形)」はあーでもない、こーでもないと「思慮をめぐらすこと」を
 意味することになります。
 
かし」 とは「普通の考えを超越した、及ばないこと」を意味します(を=上位に存在することを意味
       します。別途次項で説明します)。すなわち、「思慮を超えたこと」、「不思議」、「へんなの!」
       を意味することとなります。ひごろ「おかしいねー」などと使っていますね。
じ」 は「かじをとる」にあるように、とるべき方向を考え、行動することを意味します。「かす」の
名詞形です。
「くつか」 は間違った漢字「国司」により原意が不明となっています。所定の地方(くに)に付帯
し、そこ(国)を管理、治める人を称したものです。「」は「沖津白波」、「辺津宮」な
どの用例にあるように、「どこそこにある・・、付帯する」ことを意味します。
    :「か」にはこの概念と異なる複数の概念があります。例をあげると、
        「む(噛む)」
        「らだ」に代表される、「構造体」、「躯体」の概念。 
         などなど。別項でご紹介します。
 
例2:「
 以下の例も一見何の関係もない言葉の羅列にみえます。

 「を(丘、岡、陸)」、「(棚に物を)を(置く)」、「をどり(鴛)」、「ををす(火を起こす)」

 とめ(乙女)」、前出の「かし(可笑しい)」
 
   しかしながら、少し原意を考えると、これらの「を」には共通の概念があることがわかります。
 「を(丘)」 は周辺に対し持ち上がっている場所を意味します。ここの「か」は「か」の第二義、躯体、
           地殻構造を意味します。「からだ」、「さか」などの「か」を思い出してください。(別途ご紹介)。
 「を」 は対象とするものを所定のものの上に設置することを意味します。
      「ます」、「まく」、「まる」も同じく、ある場所に所在する、さすことを意味しますが、「を」は
      「所定の物の上面に所在さす」ことを意味します。
      それに対して「ます」など「ま」の場合は、「所定の領域、空間(ま)に所在さす、所在する」
      ことを意味します。
「をどり」 は「水の上にすむ鳥」。古、「をし」は水鳥のことであった。「のことです。「し」
は彙要素中の基本語であります。別途ご紹介いたします。
 「ををす」 現代では「火を作る」ことの意となっていますが、本来の意味は「ひどこ(火床)の灰
の下にふせてあった火種を火床の灰などの上に置くこと。「こす」=こちらにもたら
す意。少し前までは「いろりの火をおこす」という言い方が普通であった。かっては、
「火を作る」ことは容易でなかったため、灰の中に置き火として保存したのです。
 現代では「ラジウス」などで簡単に火が作れますが、一度、薪を燃やしてお料理を
作って見てください。昨日の残り火を「起こして」火を作るようにしたほうが 容易です。
 「」 は、現在では「少女」の意味に使われていますが、「おとこ」、「おとな」とともに、「成人
性」を意味しました。
「にほい」という言葉がありますが、活き活きとした表情豊かな女性を意味します。
にほふ」の意味は次項で説明します。
 「かし」 これは、前出のとおりです。「思慮(かし)の及ばぬ(を)こと」
       
       「を」は「上位」、「優位」、「優勢」などの概念をもちます。音的に近い「う」、「ゑ」と相互に
       変態して用いられています。
 
       現在では「を」は目的格を示す「助詞」などと分類学的な表現で説明されてますが       
       「を」は「く」や「す」など行為、作用を意味する語彙要素と連携し
       「ある対象物に対する働きかけ」を意味します。「・・に を(置く)」となります。
        「を」も同じで、「押す」という意味になります。
       ちゃんとした意味があるのです。
 
例3:「
  「にむ(睨む)」、「にふ(前出)」、「きび」、「にやか」、「か(蟹)」、「に(似る)」
 
   これらの言葉も、一見何ら関係ない言葉の群れのように見えます。結論から言いますと、答えは、
 最後の例の「に」にあります。 「に(似る)」というのは「顔付きが同じようだ」ということです。「体
 の形体」が似ている場合は「後姿が似ている」、「背格好が似ている」と対象物を必ずつけて言いま
 す。すなわち、「というのは現在のかお<かを>)」のことなのです。
 「かを」は「かほ」ともいいますがもともとは体の部位を示す言葉です。後世こちらが主として用いら
 れるようになり、「に」は日本の言葉の基底部にのみ残ったものと考えられます。
 
 では、上記の言葉の原意はなんでしょうか。
 「にむ」 は「にら(かお)をみる」。「にら」は顔を、やや卑下して称したもの。「む」は「め」の変形で、
        「見る」ことを意味します。辞書では「推量すること」という説明がありますが、「
       目視、視認できる様」を意味します。ついでの参考ですが「あらむ」というのは現代
       語では「・・であるようにみえる」ということです。別途、語彙要素の解説でご紹介します。
 「にふ」 これは 2)項の中の「にほいをとめ」の「にほふ」が用例です。若い、元気な娘さんの輝
        いて、「ほのお<ほのほ>(炎)」のような様を表現したものです。
ちなみに、「うのはなのにほうかきね」という歌の文句があります。「卯の花」は、見事に
きそろいますが、匂いはしません。この文句も「卯の花が輝くように咲き乱れる」さまを
表現しているのです。 
 「にき」 これはめずらしく、対応する漢字がありません。「きび」というのは「こぶ「瘤」」や「か
       ぶ(蕪)」と同根で、「膨らんだも」ののことです。ここでの「ぶ」は「ふくらむ」の
       「ふ」と同根です。「にきび」というのは「顔のできもの」ということになります。
なぜ漢字がないのか?中国人には「ニキビ」はないのでしょう。(ホント?)
 「に」 これは多数の語要素の解説が必要なのですが、簡便に言うと、「に」は「に」とおな
じ「かお」を意味します。「こ」は「ねこ」の「こ」と同じく、愛称的な表現です。
「やく」というのは表面を作ることですが、解説は語要素の解説「や」を参照してくださ
い。
 「か」  これは、日本人が発想した大変ユニークで、楽しい命名です。この原意は説明するまでもな
        いことですが、答えは「猿蟹合戦」の「えほん」に出てくる「かに」の表現にあります。
蟹の甲羅の部分は「かお」を模して描かれてますよね。「からだ」が「かお」になっている。
カニをゆでて皿の上に置いたとき、確かに、絵本の絵のように、甲羅の部分は「かお」に、
見えますよ。「かに」を呼ぶとき「か」、「に」とそれぞれ独立的に発音するのは其の
いわれのせいではないでしょうか。
 
 以上、ご参考に三例を付記しました。
 
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